はじめに
第4回目のお気に入り製品は、前々回の記事で紹介した「T50RPmk3」と同世代の派生機種であり、私のコレクションの重要な位置を占めている「FOSTEX T60RP」 です。
前回の記事でも少し触れましたが、T50RPmk3のシンプルさゆえに物足りなかった部分を補ってくれる存在として出会ったのが、このT60RPでした。
私自身、ゼンハイザーの定番モデルや、同じ平面駆動型を搭載したHIFIMANの製品など、数多くのヘッドホンを聴き、比較を繰り返してきました。他社製品にもそれぞれの良さがありましたが、最終的に「やはり自分の手元に残すべきはお気に入りのFOSTEX製品だ」と再認識させてくれた象徴的な一台でもあります。木製ハウジングのヘッドホンは本機が初めてで、以降、木製ハウジングのヘッドホンを狙い撃ちするきっかけとなった製品です。
T50RPシリーズが持つスタジオモニターとしての無骨なクオリティに、リスニングとしての豊かな響きと質感をプラスした本機。今回は、木製ハウジングならではの魅力と、これまでのシリーズとの違いをお話していきます。
【3Dアーカイブの閲覧について】
本ブログでは「XREAL Beam Pro」および「FinePix REAL 3D W3」を活用し、平面の写真や文章だけでは伝えきれないプロダクトの存在感を「立体(3D)画像」でアーカイブしています。
3D画像(SBS)
クリックで拡大表示が可能です。3D閲覧環境をお持ちの方は、全画面表示にしてデバイス側でSBSモードに切り替えることで、質感や奥行きをより詳しく確認いただけます。
3D画像(MPO)
あわせて掲載しているMPOファイルについても、閲覧可能な環境をお持ちの方であれば体験してみてください。
(閲覧環境例:VRゴーグル + SKYBOX VR Video Player)
主要スペック
- ドライバー: 平面磁界型(RP)(第3世代RPドライバー)
- 再生周波数帯域: 15〜35,000Hz
- インピーダンス: 50Ω
- 感度: 92dB/mW
- 最大入力: 3,000mW
- 形状: セミオープン・オーバーイヤー
- 接続方式: 有線(片出し着脱式 / バランス接続対応)
- プラグ: 3.5mm 4極ステレオミニプラグ
- 素材: 木製ハウジング [アフリカンマホガニー] / 本革ヘッドバンド / 金属製スライドロッド
- 質量: 約380g(コード含まず)
主観による評価
スペックだけでは見えてこない、私なりの独断と偏見の評価をチャートにしてみました。
音の傾向
- 解像度: ★★★★★★★☆☆☆
- 高 音: ★★★★★★★☆☆☆
- 中 音: ★★★★★★★★☆☆
- 低 音: ★★★★★★☆☆☆☆
- タイプ: リスニング
- 音 場:やや広い ※木製ハウジング固有の響きと、独自の低反発イヤーパッドの効果
装着感・その他
- 締め付け: 普通
- 重量: 重め(RPドライバーおよびマホガニー材によるもの)
ドライバー
世代としてはT50RPmk3と同世代のドライバーをベースにしていますが、プラスチックハウジングのT50RPシリーズとは異なり、こちらは木製ハウジングに最適化されたチューニングが施されています。
実際に音を聴き比べてみると、その違いは明白です。T50RPシリーズが持つ「RP特有の瞬発力(レスポンス)」やソリッドなモニターサウンドをしっかりと残しながらも、以下のようなT60RPならではの進化を体感できます。
- 木製ハウジングの響きがもたらす、豊かで滑らかな中高域
- ボーカルの絶妙な距離感と、生々しい質感
- 刺さりのない、温かみを感じさせる空気感
高域は美しく伸び、中高域のキラキラとした輝きが心地よいです。低域は必要十分な量感で誇張がなく、ダイナミックな音楽をしっかりと表現してくれます。ただし、スマホで直刺しなど非力な環境では本領を発揮できないため、アンプ接続推奨です。聴き慣れたはずのRPシリーズに、これほどまでの進化の余地が残されていたことには、正直驚きました。
モニターライクな音に、程よい自然な響きが加わることで、じっくり音楽に没頭できる「もう一つのRPサウンド」として完成されています。私自身、ハウジングが木製になることで音がこれほど心地よい方向に作用するのを、本機で初めて体験しました。
製品および各部について
パッケージと本体


パッケージ内容は、ヘッドホン本体、書類、FOSTEXロゴステッカー、付属ケーブル(3.5mmステレオミニ)、そして標準プラグへの変換ジャックと専用ポーチ。従来のT50RPシリーズの簡易な業務用パッケージに比べると、リスニングモデルを意識した少し丁寧な梱包構成になっています。
無骨さを少し抑え、製品のプレミアム感を漂わせるパッケージデザインになっており、開封時の満足感とFOSTEXならではの安定のクオリティをしっかりと感じさせてくれる佇まいです。
サイドバイサイド(3D)の画像です。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
MPO(3D)ファイルです。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
ハウジングと調整機構



外観における最大のトピックは、何と言ってもアフリカンマホガニー材を使用した木製ハウジングです。樹脂製のT50RPシリーズとは全く異なる方向性の格好良さがあり、非常に所有欲を満たしてくれる無骨で美しい仕上がりになっています。
イヤーカップの形状やスライドロッドなど、基本のシルエットにはいつものRPシリーズの面影を残しながらも、木目がもたらす高級感によって全体的にかなり上品な印象にまとまっています。
これまでの無骨な業務用機材の雰囲気も大好きですが、木材ならではの温かみのあるアプローチも「格好いい!」と思わせてくれる見事な完成度です。
ヘッドバンド

ヘッドバンドに関しては、T50RPシリーズの合成皮革とは異なり、T60RPでは「本革(シープスキン)」が採用されています。
ロゴの表記や全体のディテールは「いつもの使い慣れたFOSTEX製」そのものですが、本革ならではのしなやかさと、使っていくうちに馴染む質感が、全体のプレミアムなイメージに見事にマッチしています。
頭への収まりも良く、装着感の安定度は従来通り非常に良好。相変わらず裏切らない、無骨さと気品が同居した素晴らしいヘッドバンドです。
サイドバイサイド(3D)の画像です。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
MPO(3D)ファイルです。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
イヤーパッド

イヤーパッドは、本製品用に開発された「低反発ウレタン」を採用したアラウンドイヤー型(耳覆い型)となっています。
T50RPmk3のフラットなパッドで感じていた物足りなさが、この立体的な新イヤーパッドによって見事に改良されており、ついに十分に満足できる装着感になりました。フィット感が非常に良く、側圧(締め付け)も適度です。耳を包み込む形状のおかげで、長時間のリスニングでも頭痛に悩まされることはありません。
また、消耗品であるイヤーパッドが比較的簡単に手に入るため、長期運用における安心感が健在なのもFOSTEX製品の嬉しいポイントです。
サイドバイサイド(3D)の画像です。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
MPO(3D)ファイルです。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
ケーブル


ケーブル周りは、左側ハウジングからの「片出し」スタイルですが、構造的にはT50RPシリーズからアップデートされています。 本体側の端子は「3.5mm 4極プラグ」を採用しており、プラグ単体でL/Rの独立配線(バランス接続対応)が可能な仕様になっています。T50RPmk4付属のケーブルとジャックの形状は同じですがケーブルの被膜がメッシュ状となってます。
私の環境では、別売りのメーカー純正バランスケーブル(ET-RPXLR)を接続し、バランス駆動でポテンシャルをフルに引き出しています。
- 【付属品】φ3.5 mm(4極)⇔ φ 3.5 mm (3極)ステレオフォーン ケーブル(2 m)×1
- 【別売り】ET-RPXLR(XLR 4極 バランスケーブル)


サイドバイサイド(3D)の画像です。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
MPO(3D)ファイルです。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
本体重量
本機の重量は約380g。RPドライバー自体の重さに加え、マホガニーの天然木を使用しているため、T50RPシリーズ(約315g〜330g)と比べると明確に重くなっています。
数字だけ見ると「重いヘッドホン」の部類に入りますが、実際に装着してみると使い勝手への悪影響はほとんど感じません。肉厚で低反発なイヤーパッドと、本革ヘッドバンドが絶妙に重量を分散してくれるため、体感としては非常にバランスが良く、ちょうど良い安定感として機能しています。この素材の密度アップに伴う重さは、ビルドクオリティの高さの証としてむしろ好印象です。
接続方式
接続方式は、アンバランス・バランスの両方式に対応しています。 付属のアンバランスケーブルでもマホガニーの豊かな響きは十分に楽しめますが、オプションとして「バランス接続」の選択肢が最初から確保されている構造は非常にありがたいです。
私にとって、本製品が初めてバランス接続を体験した機種です。今でもメインで利用しているヘッドホンアンプである「FOSTEX HP-A4BL」と本機であるT60RPのセット品を購入し、アンバランス接続との違いを聴き比べ、それ以降現在までバランス接続できる機種についてはバランス接続で聴くようになりました。
脱着式ケーブルの思想もしっかりと受け継がれているため、万が一の断線時にもユーザー自身で簡単に交換が可能。お気に入りの一台として、メンテナンスしながら5年、10年と末永く付き合っていくことができます。(木製ハウジングの経年変化も楽しめます) このタフさと信頼感の高さは、さすがRPシリーズの系譜だと製品を手にするたびに実感させられます。
主観レビュー
シルエットは大好きな従来シリーズのDNAをそのまま残しつつ、マホガニーウッドと本革パーツという絶妙な素材アップデートを加えることで、見事な「いいとこどり」を実現しています。 全体像は樹脂製モデルとは違うベクトルでの格好良さがありますが、細部を凝視すればいつもの安心できる馴染んだ造形がそこにある。まさにファンとして120点満点と言わざるを得ない完成度です。
音についても、T50RPmk3のストレートな音をさらに一歩進め、響きの美しさと中高域の滑らかさを引き上げてくれたような、贅沢なリスニングを体験できます。
まとめ
T60RP(初代標準版)がもたらした最大の恩恵、それは「平面駆動(RP)のポテンシャルを、最も美しい響きでリスニングできる満足感」です。
本製品での私の初体験が2つあり、1つは初めての木製ハウジング。もう1つは初めてのバランス接続。 どちらも現在でもヘッドホンを選ぶ際の基準として大きな比重を占めている部分となっております。
T60RPは、これまでのRPファンである私に新しいアプローチで応えつつ、リスニング機として別の側面も見せることにも成功しています。あらゆる意味において、これこそがFOSTEXが提示した「もう一つの正統進化」の姿なのだと、納得させられる一台でした。
知人におすすめのヘッドホンを尋ねられた場合には、価格やプロダクトとしての総合的なバランスも含め、おそらく本機を勧めることになると思います。 音楽を聴く際に何となく手を伸ばす機会が多いのが本機となっており、木製ハウジングやバランス接続を体験するにはもってこいの入門機だと思います。
このブログを通じて、名機である本機の魅力が、少しでも多くの方に知っていただく機会になれば幸いです。



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