はじめに
第5回目のお気に入り製品は、これまで連続して紹介してきたFOSTEXのRPシリーズから少し趣向を変え、私のコレクションの中でもひときわ異彩を放つ「KOSS PRO/4AA」です。
前回の記事では、FOSTEX T60RPの木製ハウジングがもたらす響きやバランス接続の魅力についてお話ししました。最先端のハイレゾ音源や繊細な表現力を追求することもオーディオの醍醐味ですが、それとは全く対極にある「時代を超えたプロダクトの魅力」を体験させてくれるのが、このKOSS PRO/4AAです。
1970年代の初登場から現在に至るまで、基本的なデザインや設計を変えずに製造され続けている本機。航空機や軍用無線のヘッドセットを彷彿とさせるカーキ色の外観と、その重厚な佇まいは、数あるヘッドホンの中でも唯一無二です。
FOSTEXが持つスタジオモニターとしての「プロ気質」とは違う、アメリカン・ヴィンテージの「無骨さ」。今回は、現在の基準から見ればツッコミどころ満載でありながらも、なぜか手元に置いておきたくなる本機の魅力と存在感をお話していきます。
「1970年にスタジオヘッドホンの基準を塗り替えた伝説機が、半世紀以上を経て今なお現行製品として入手できる。高インピーダンス250Ωのためアンプは必須ですが、その音は最近の製品では真似できない独特の世界観を持っています。」
【3Dアーカイブの閲覧について】
本ブログでは「XREAL Beam Pro」および「FinePix REAL 3D W3」を活用し、平面の写真や文章だけでは伝えきれないプロダクトの存在感を「立体(3D)画像」でアーカイブしています。
3D画像(SBS)
クリックで拡大表示が可能です。3D閲覧環境をお持ちの方は、全画面表示にしてデバイス側でSBSモードに切り替えることで、質感や奥行きをより詳しく確認いただけます。
3D画像(MPO)
あわせて掲載しているMPOファイルについても、閲覧可能な環境をお持ちの方であれば体験してみてください。
(閲覧環境例:VRゴーグル + SKYBOX VR Video Player)
主要スペック
- ドライバー: ダイナミック型
- 再生周波数帯域: 10〜25,000 Hz
- インピーダンス: 250 Ω(かなり高め。アンプ駆動が前提)
- 感度: 95 dB/mW
- 形状: 密閉型・オーバーイヤー
- 接続方式: 有線(片出しカールコード / 着脱不可)
- プラグ: 6.3mm 標準ステレオプラグ
- 素材: 樹脂ハウジング [アースグリーン] / スチール製ヘッドバンド・スライドロッド
- 質量: 約595g(コード含む)
主観による評価
スペックだけでは見えてこない、私なりの独断と偏見の評価をチャートにしてみました。
音の傾向
- 解像度: ★★★★☆☆☆☆☆☆
- 高 音: ★★★★☆☆☆☆☆☆
- 中 音: ★★★★★☆☆☆☆☆
- 低 音: ★★★★★☆☆☆☆☆
- タイプ: リスニング(ヴィンテージ)
- 音 場:狭め ※密閉感が強く、音がダイレクトに耳へ飛び込んでくる独特の密度
装着感・その他
- 締め付け: 非常に強い(万力と形容されるほどのホールド感)
- 重量: 超重量級(金属パーツの塊によるもの)
ドライバー
PRO/4AAに搭載されているのは、FOSTEXでお馴染みの平面磁界型(RP)ではなく、伝統的な「ダイナミック型」のドライバーです。
現代のハイレゾ対応ヘッドホンと音を聴き比べてしまうと、高域の伸びや空間の広がり(解像度)では及ばない部分があるのは事実です。しかし、このヘッドホンでしか味わえない「濃厚な中域」と「アナログレコードを聴いているかのような温かみ」は、他では代えがたい魅力を持っています。
- ボーカルやギターが太く、生々しく押し出してくる中音域
- 輪郭が丸く、聴き疲れしない独特のヴィンテージサウンド
- ジャズや70年代のロックを鳴らした時の圧倒的な「雰囲気」
緻密な音を分析するように聴くRPシリーズとは異なり、こちらは「音楽の熱量やノリをそのまま浴びる」ような鳴り方をします。繊細さはありませんが、その不器用でストレートな音が、不思議と心地よい方向に作用するのを体験できるはずです。
製品および各部について
パッケージと本体



パッケージも非常にシンプルで、時代を感じさせるクラシカルなデザインが採用されています。最新の洗練された箱とは違う、昔ながらの「アメリカの電化製品」を買ったようなワクワク感と無骨さが本機の味となっております。サイドのクリア部分から本体実物が確認できるあたりのセンスは古さを感じません。
サイドバイサイド(3D)の画像です。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
MPO(3D)ファイルです。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
ハウジングと調整機構



1970年に登場した当初から変わらない「カーキ色」のカラーリングが、このヘッドホンの最大のアイデンティティです。現代のヘッドホンが黒・白・グレーで溢れるなか、このベージュ×ブラックの組み合わせは特別な個性を放っています。
金属とプラスチックを組み合わせた頑丈な造りで、業務用としての過酷な環境に耐えるべく設計されています。スライドバー式のヘッドバンドで頭部へのフィットを調整できますが、イヤーカップが硬めで側圧もやや強いため、長時間の装着では人によっては頭痛が生じることもあるかもしれません。
付属のカールケーブルは約2.4mと長く、据え置き環境での使用を前提とした設計です。左ハウジングからの片出し仕様で、6.3mmプラグとなっています。左ハウジングには本来ブームマイク取り付け用のネジ穴がある様で、時代感やルーツを感じさせます。
外観における最大のトピックは、何と言ってもこの「カーキ色」のハウジングと、剥き出しの金属パーツの組み合わせです。流線型やモダンさとは無縁の、パッと見だと軍事用アイテムのような渋さがあり、他に近い存在のヘッドホンが無く非常に気に入っております。
このゴツゴツとした立体感や質感のコントラストは、3D(立体視)写真でアーカイブするのに最も適した「映える」デザインだと思いました。
ヘッドバンド

ヘッドバンドは、頑丈な金属プレートをベースにスポンジクッションが取り付けられています。
しなやかさや軽さを重視する現代のトレンドを完全に無視した、とにかく「壊れないこと」を最優先したようなタフな作りです。この割り切った造りも、本機の個性や特徴として非常に気に入ってます。
装着した感覚は控えめに言ってもヘルメットを着用している感覚に近いと思います。
音楽を聴いている時に、万が一物が上から降ってきたとしても安全が保たれそうです。
サイドバイサイド(3D)の画像です。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
MPO(3D)ファイルです。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
イヤーパッド

イヤーパッドは、分厚く密閉性の高い素材で作られています。
「万力」と形容されるほどの強い側圧と相まって、装着時の遮音性は非常に高いです。長時間のリスニングでは耳周りが蒸れたり、重さで首が疲れたり、頭痛を感じる可能性もありますが、「このヘッドホンを被っている」という物理的な満足感が、所有欲を満たしてくれます。
イヤーパッドについては控えめに言ってもタイヤのゴムみたいな感じです。所持して数年たちますが、一向にヘタる様子がうかがえません。頑丈さに関しては所持しているヘッドホン中断トツのトップです。
サイドバイサイド(3D)の画像です。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
MPO(3D)ファイルです。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
ケーブル

ケーブルは左側片出しの「カールコード」が採用されており、プラグは「6.3mm 標準プラグ」が直付けされています。
断線してもケーブル交換ができない直付け仕様ですが、引っ張りに強いカールコードと太めのケーブルは、断線しそうな気配はなく安心感があります。
サイドバイサイド(3D)の画像です。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
MPO(3D)ファイルです。閲覧環境をお持ちの方は、ぜひお試しください。
本体重量
本機の重量は約595g。T60RP(約380g)と比較しても圧倒的に重く、現代のヘッドホンの中では間違いなく「超重量級」だと思います。所持している物の中でも最重量。
装着すると頭にズシリとくる重さを感じます。決して使い勝手が良いとは言えませんが、この重さこそが金属と高密度な樹脂が詰まっている「丈夫な造りの証」であり、長く流通している優秀なプロダクトとして楽しんでいます。
接続方式
接続方式はアンバランスで、先端は6.3mm標準プラグです。 また、インピーダンスが「250Ω」と非常に高いため、スマートフォンやポータブルプレイヤーの直挿しでは音量が十分に取れず、本機の性能をフルで発揮できません。
私自身、メインで利用しているヘッドホンアンプである「FOSTEX HP-A4BL」に接続して鳴らしています。
主観レビュー
シルエットや素材感は、洗練された最近のプロダクトとは全く違うベクトルの雰囲気があります。全体像は軍用機材のように無骨ですが、細部まで細かく作られており、お気に入りの1台として、手元に置いておきたい製品だと思います。
音についても、FOSTEXのRPドライバーと違い、無骨そのものと思わせるだけの個性を持っています。
まとめ
本製品は、まだヘッドホン沼の初期にいた頃、見た目で購入を決めました。その後高性能なヘッドホンも所持していく中で、本ヘッドホンで音楽を聴く機会は減っていきました。ほかのヘッドホンに関しては、音が見劣りしたり、立ち位置がかぶる場合などは手放していきましたが、他に近い存在が無い本機は高価な製品を所持した今でも手放しておりません。
重い、締め付けが強い、アンプが必要……と、現代の基準で考えると欠点となりかねません。しかし、それらの要素すべてが「PRO/4AAの個性」として他に類のない製品であることが、現在まで販売され続ける息の長い優秀なプロダクトとなったのだと思います。
FOSTEXのRPシリーズをメインで愛用している私にとって、本機は最高の「味変」であり「気分転換」です。音楽を聴くという行為に、機材の重みや特徴を感じる楽しさをプラスしてくれる、特別な一台だと思います。ご興味がある方はぜひ実物を手に取ってみてください。
このブログを通じて、唯一無二である本機の無骨な魅力が、少しでも多くの方に知っていただく機会になれば幸いです。


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